【作り手探訪】河村寿昌 ー 愛知県一宮市



今回ご紹介するのは、愛知県一宮市に工房を構える木工職人・河村寿昌(かわむらとしまさ)さん。カキモリとは、かれこれ15年ほどのお付き合いになります。代表の広瀬が偶然目にした河村さんの作品に心を奪われたことをきっかけに取り扱いが始まり、それ以来、木軸ボールペンやつけペン軸はカキモリの人気商品として長く愛されています。

そんな河村さんから新たに、木軸だけでなく金属パーツもオリジナルで製作したボールペンのシリーズができた、というお話をいただきました。その製作の舞台裏に触れるべく、河村さんが木を集め、削り、磨き、そして形にしていく現場を初めて訪ねてきました。


木の収集家への道


工房の入り口を抜けるとまず目に飛び込んでくるのは、床から天井まで所狭しと並べられた木の数々。香ばしい木の香りが漂います。「木のにおいする?もう慣れちゃってわかんないや。」と少しはにかむ河村さん。



あるときお父様から突然「このまま弁当屋を続けるか、やめるかは自分で決めろ」と告げられ、やめることを選択。ものづくりに強い思いがあったわけではなく、不器用さも自認していましたが、木工は電気さえあればできる、と思い立ち、石川県山中の職業訓練校に入ります。ここから、“木を集める人生” が始まりました。





集まってくる木


通常木材を手に入れるには、市場や銘木屋に買いに行くのが一般的。けれど、そうすると種類が限られてしまいます。

木工をやろうと決意したあと、河村さんはまず電話帳を開き、木に関係のありそうなあらゆる場所へ出向きました。雑木、端材、使わなくなった家具、倉庫に眠っていた古材……。一見、使い道のなさそうな木が次から次へと河村さんのもとに集まってきます。

元々木を集める目的は、漆塗りの生地として使える木(トチやケヤキ)を集めることでしたが、いつしか集めた木の種類や量は、その “目的” を超えていきました。




木工は冷蔵庫の残りもので料理するように


集めた木を使って作品を作るようになったのが18年ほど前。コンペに出展したり、個展を開催することでじわじわと認知が広がっていきました。小箱を製作してみると、茶器として購入する人が多かったことから、次は本格的に茶器を制作。茶器があるならばと食器、小皿も製作し、それらの端材でボールペンを。さらに残ったカケラはつまようじ入れやキーホルダーに……。

「冷蔵庫の残りもので料理する感じですね」と、河村さんは表現します。集まった木を余すことなく使い切る。その過程であらたな創造が宿るものづくりです。




2つの技法


河村さんが用いる技法は2種類。食器や小箱などには「和ろくろ」、ボールペンには「西洋ろくろ」を使います。





西洋ろくろは、木の両端をしっかりと固定できるため、ボールペンのような細長いものを削るのに向いています。仕上げにはサンディングペーパーとワックスで 木の毛穴(道管)を丁寧に埋めることで、変形や割れを防ぎます。

なんと私たちも工房を訪れた際に、ボールペン作りを体験させていただきました。 西洋ろくろを使用し角材からボールペンの形に木を削らせてもらったのですが、まっすぐ削ることはとても難しく、すさまじい速さで回る角材に刃をあて続けることができません。なかなか理想の形にならず、河村さんにお手伝いいただくと一瞬にして形が整えられていきます。刃物と河村さんが一体となって形作られていくその様は、まさに職人技でした。




木に宿る記憶とストーリー


今では、工房に山ほど木が集まっているため、よほど珍しい木でない限り新たに買いつけはしません。ボールペンは角材のまま保管された無数のコレクションの中から、一本一本削り出していきます。その中には、長年川の底に埋まっていたことにより、独特な風合いに変化した神代とよばれる木や、一見木には見えないほど鮮やかな紫や黄色の木から作られたものもあります。





数えきれないほどの種類の木を持ちながらも、使う木の希少価値で値段をつける、ということを河村さんはしません。「たぶん、そんなことしてないのは自分だけだと思うよ」と、どこか照れたように話します。どの木にもひとつひとつにストーリーがあり、記憶が宿っている。木の名前や値段ではなく、“出会った一本” をそのまま形にすることが、河村さんの仕事だとおっしゃっていたことが印象的でした。




今では息子の勇軌さんも河村さんとお手伝いに入り、二人三脚で工房で仕事をされています。木だけでなく技術も受け継がれていく様子を目の当たりにし、ますますボールペンへの愛着が湧いてきました。





こうして出来上がった貴重なボールペン。これまでよりさらにたくさんの方にお届けできるよう、海外のパートナーにも販売をすることに。カキモリでオリジナルの箱を用意し、「Handcrafted ballpoint pen」と名付けました。ひとつひとつ違う樹種の説明カードも付属します。ぜひ一本一本異なる個性のボールペンから、手になじむ1本を見つけてみてください。





前のページ よみものに戻る 次のページ

商品を見る

Handcrafted ballpoint pen - ソフトメイプル
Handcrafted ballpoint pen - ソフトメイプル
NEW

Handcrafted ballpoint pen - ソフトメイプル

通常価格 ¥16,500
セールスプライス ¥16,500 通常価格
Handcrafted ballpoint pen - ツバキ
Handcrafted ballpoint pen - ツバキ
NEW

Handcrafted ballpoint pen - ツバキ

通常価格 ¥16,500
セールスプライス ¥16,500 通常価格
Handcrafted ballpoint pen - パープルハート
Handcrafted ballpoint pen - パープルハート
NEW

Handcrafted ballpoint pen - パープルハート

通常価格 ¥16,500
セールスプライス ¥16,500 通常価格
Handcrafted ballpoint pen - ヤマモモ
Handcrafted ballpoint pen - ヤマモモ
NEW

Handcrafted ballpoint pen - ヤマモモ

通常価格 ¥16,500
セールスプライス ¥16,500 通常価格