藤本壮介さんの展覧会のための商品づくりをして欲しい、とお声がけいただいたのが、今年の春。この展覧会のミュージアムショップで販売するアイテムとして、日本のものづくりを伝えられるもののひとつに選んでくださったのだそう。
藤本さんといえば、「2025年大阪・関西万博」の会場デザインプロデューサーでもあり、いま最も注目される建築家のひとり。そんな中開かれる展覧会の企画にお声がけいただいたことは、とても光栄なことでした。
作ることにした商品は、インク、つけペン、鉛筆。インクは、インクスタンドの自分で色を作るというサービスを生かして、藤本さんの色を作っていただくことになりました。

万博の直前のとてもお忙しい中、少しの間ではありましたが、時間をとってくださった藤本さん。事務所へお邪魔して、一緒に色を作らせていただくことに。
インクスタンドの「自分の色をつくる」というコンセプトや、どのように色が生まれるかをご説明したところ、とても真剣に色のアイデアを考えていらっしゃいました。

それから、ベースカラーや色サンプルをご覧いただきながら、出身地である北海道東神楽町で見た風景、それからアトリエのあるパリでの景色について話してくださいました。
「日暮れ前だけど真っ赤な夕焼けではない、明るいピンクがかっている空が北海道だと見られる」
「モネが描くパリの空にもきれいなピンク色があって、ほんとに見られることがあるんだよね」
「北海道の森で日が差し込んだ時に見られる光の森の色がいいね。ハッピーな気持ちになれるみどり色」
その風景の回想をそのまま2つの色のコンセプトにすることとなり、この日はお暇しました。
その後、そのコンセプトをもとに実際の色を決めていく段階でも、多忙な中でも藤本さんご自身が提案する色を何度も実際に見てくださり、納得のいくまで一緒に作り上げていきました。

そして生まれた、2つの色。
End of the Day

輪郭がゆっくりと解かれていく時間
かたちあるものは光の余韻に包まれ、
消えゆく空とともに、
かたちのない風景へと移ろっていく
Spring Forest

芽吹きの気配が、
空間の内と外を曖昧にしながら広がっていく
生命の揺らぎが、
建築と風景の境界をにじませる
実はカキモリ代表の広瀬は現在、北海道在住。藤本さんにとっての原風景の色に、広瀬も出会ったことがありました。色から生まれた繋がりから、この2つの色はカキモリにとっても、より愛着の湧く色となりました。
そしてこの特別なインクと一緒に使えるようにと作ったつけペン軸と、展覧会の思い出に手に取りやすい鉛筆。
ペン軸は、日本で採れた山桜を、「熊野筆」で有名な広島県熊野町で丁寧に加工して作っています。シンプルな形をそのまま生かし、藤本さんのサインをレーザー彫刻で彫ったシンプルなデザインに仕上がりました。
三角軸の鉛筆は、東京都葛飾区にある老舗の鉛筆工場にご協力いただき、今回の展覧会でもキーとなる藤本さんが大切にしている言葉たちと、展覧会内の円環にてご覧いただけるぐるぐるのデッサンを印刷しました。木の風合いをそのまま生かすためにあえて無塗装に。


こうして、日本のものづくりと、藤本さんの建築でも大切にされている「自然」との繋がりを感じられる全てのアイテムが完成しました。

藤本さんの世界観をそのまま込められるように、そして展覧会を見に行かれた方が、それをご自宅でも感じていただけるように、カキモリのものづくりのこだわりをたくさん詰めた商品です。展覧会限定の商品となりますので、ぜひたくさんの方に見ていただけたら嬉しいです。
《展覧会情報》
藤本壮介の建築:原初・未来・森
場所:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
会期:2025年7月2日〜2025年11月9日
主催:森美術館
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/soufujimoto/